複雑な板の動き、そして宙返りやアクセルなどアクロバティックな 動作で観る者を惹きつけるアクロスキー。 これらは全ての動作を学ぶには長い時間の習熟を要しますが決して不可能では ありません。だれもがこの雪上の自由を得る事ができるのです。
あなたも始めてみませんか?
アクロがとっつきにくい最大の理由はその道具の特殊性にあるのではないでしょうか?
アクロは通常のスキーではかからない力がかかる為、板の強度や ビンディングの構造が大きく関係します。また、フリップ等の体重をポールに かける技も多数あるため、ポールも専用の頑丈なものを使用する必要があります。
トランソニックとハートが製造していたのですが、なんと`99年度から 製造を中止してしまいました、残念です。 このため、選手といえど板探しには苦労しています。 Jrのレーシング用の板を使用する選手も多数います。
男子 | - 最低140cm、身長170cm以下の場合は130cm |
女子 | - 最低130cm、身長160cm以下の場合は120cm |
ジュニア (18歳以下) | - 制限なし |
長くても、身長までという規定があります。
普通はだいたい肩から顎の間くらいの長さを
選べばよいでしょう。もちろん短い方が扱いやすいので、
もっと短くても構いません。ただし胸より短いとフリップの時高さが低すぎて
かえって恐いかもしません。
現在は、シナノのみが製造しており、一般のスポーツ店で取り寄せが可能です。
ただし、こちらも製造中止の噂があります。やりたい人は是非今のうちに手に
入れましょう。
ちなみに、長さは 5cm 単位、太さが20mm(主に女子)と22mm(主に男子)の二種類、
バスケットの大きさが75mm(主に潜りにくい雪/競技バーン)と90mm(柔らかい雪)
の二種類があるので、注文の時に指定してください。
特に制限ありませんが、比較的前傾がないブーツの方がスピン等が
しやすいようです。
また足首を使うので、あまり硬いブーツもよくありません。
アクロは故意に捻ったりするので、一般的に開放しないものを使います。 現在これらの固定式のビンディングは極めて入手困難なので、 FAN SKI用等を流用している選手もいます。 やはり激しく動くので軽いものが良いです。 初めのうちは、捻って足を怪我するかもしれないので、 普通のビンディングでもいいでしょう。
アクロは複雑な動きや特殊なスキー操作があるため、本だけを見て 独学するにはかなり壁があります。 ここはやはり教えてもらうのが一番です。
非常に限られますが、アクロを教えてくれるスキースクールがあります。 レンタルの用具もあります。 また、アクロスキー選手のいるクラブに入るのもいいかもしれません。
場所 | 形式 | 連絡先 |
---|---|---|
富士見パノラマスキースクール | 指定日常設 | 0266-62-2999 |
ザイラーバレー角皆モーグルスクール | 事前予約制 | 0261-75-4441 030-362-0924 |
名称 | 所属 | 連絡先 |
---|---|---|
D.D.DIAMOND | 東京都 | - |
港区MWF | 東京都 | - |
スカーゼF.S.S.T | 東京都 | - |
ウエスターナF.S.C | 京都府 | - |
いきなりアクロの道具はちょっと...という場合は、試しに普通の板でできる事を やってみましょう。
例えば、パラレルスピン。これは板をそろえたままくるくる回る事で、ミニスキー では簡単にできます。これを長い板でやってみましょう。 意外に難しい事がわかると思います。 コツはその場で回ろうとしないで、あくまでも斜面を滑りながら回る事です。
なれてきたらポールさばきに気を配ってみましょう。 スピンの最中にポールがぶらぶらするとなんとなく締まりがなくてカッコ悪いです。 たとえば、手を広げしっかり肘を伸ばしポールの先端を自分に向けるようにして スピンしてみましょう。 これがうまくできるとポールが体に巻き付くようにスピンできてとてもきれいです。
次は、もう少し複雑な板の操作をやってみましょう。 ここでは、イリュージョンというスピンをやってみます。 このスピンは簡単にいうと、滑りながら半回転パラレルスピンして キックターンをする事です。 最終的には、はじめに板をクロスさせて半回転しながらキックターンを行います。 ムービーがあります。(AVIファイル477KB) ちょっと大きいファイルですがこれを見れば動きが理解してもらえると思います。
どうです? だんだんアクロに興味が湧いてきたでしょう。
アクロは難度点(TM)と芸術点(AI)の合計30点満点で採点されます。 どんな技がある見ていきましょう。
技については、スキージャーナル社 から「フリースタイルスキー教程」という本が出ています。 ルールは古いですが技は変っていませんので、十分参考になります。 今年改訂の噂がありますが、まだのようです。
難度点の事で、フィギアスケートのアクセルのような「ジャンプ」 と、ポールを支えにして宙返りを行う「フリップ」があります。 競技では、ジャンプとフリップを取り混ぜて6技まで採点されます。 それ以上やってもTMとしては採点されません。 また、ジャンプがTM技の50%以上ないといけません。 つまり、6技やった場合は、3技以上がジャンプ、4技やった場合は 2技以上がジャンプでないといけません。 つまりフリップだけできても競技には出られないという事です。 また、この行う6技は異なる種類の技でないといけません。
女子とジュニアは、同じ技でも男子より若干難度点が高いです。 以前は全ての技に難度がついていましたが、現在はフリップとジャンプ だけが難度の対象となります。
フリップは大別して前宙と後宙がありますが、アクロの場合は ほとんど前宙です。ポールの持ち方で以下の三種類があります。
オープン 手の平でポールにぶら下がるように して宙返りします。 写真はフロントオープンです。 | |
ガッツ ポールを揃えて持ち腹部を支点にし て宙返りします。 写真はフロントガッツのワンポール フルツイストです。 (ガッツフルAVIファイル 220KB) | |
ロックンロール ガッツと同様ですが、いったん足を 振り込んで、その反動で回転します。 ガッツとロックの差はこの振り子動 作があるかないかです。 |
それぞれにバリエーションとして、一本のポールで行う(ワンポール)、 板をクロスさせて行う(クロスランディング)があり、前宙後宙も 考えると3×2×2×2=24通りの技が考えられます。 また、これに捻りを加えるか加えないかでまた技が異なります。 捻りは沢山捻れば難度点は上がりますが技の分類として、捻るか捻らない かしかないため、捻り技を複数行う場合は、他の要素 (ガッツ/ロック、クロスランディング等)を変えなければいけません。 ただし、実際行われてる技は大部分がフロントフリップのツーポールで アンクロスランディングです。 ガッツだけはワンポールも頻繁に見られます。 オープンワンポールは元ナショナルチームの生沼選手が行っていましたが、 ほとんどやる選手はいません。 また、たまにバックフリップをやる選手がいますが、まずほとんどが オープンのバックフリップです。 第一回世界選手権では、一人だけバックガッツを行った選手がいました。 バックロックはいまだかつてやったという話を聞いた事がありません。 なお、ジャッジマニュアルには、ダブルガッツという記載がありますが、 これは、空中で二回転を行う事らしいのですが、こちらも見た事が ありません。
現在世界最高難度は、フロントガッツダブルツイストです。
ジャンプは、右回転と左回転がありますが、これは別な技とみなされます。 フリップの捻りは左右変えても同じ技になりますから注意しましょう。 また、捻り回転数が異なっても踏み切りが同じなら同じ技になるので、 こちらも注意しましょう。
ジャンプは踏み切り方法の違いで以下のような種類があります。
アンクロス系 |
---|
インサイド |
アウトサイド
(ムービーAVIファイル 216KB) |
リバースインサイド |
ティップボルト |
クロス系 |
インサイドステイクロス |
インサイドリクロス |
アウトサイドクロスイン |
サンパー |
リバースインサイドステイクロス |
リバースインサイドリクロス |
ティップボルトクロス |
現在の最高難度は、二回転半を超えます。 おそらく申告は三回転ではないでしょうか。 アクロでは、回転数を角度の百の位で書くので、 例えば、インサイドダブル(720゜)なら 7i と書きます。
芸術点の事で、転倒等はこちらから減点されます。 減点の事をディダクションと言います。 これは音楽との調和やアクロバテックな要素等を元に採点されます。 基本的に減点法で転倒等がどんどん減点されていきます。 マイナスになった場合は、0点です。
アクロの特徴として難度のつく技以外に複雑な板の動きや滑り方が あります。これらは、AIでアクロバティックとか曲との調和等で 評価されます。
まずアクロを始めた場合は、最初に覚えるのがスピン系の技でしょう。 最近は、ショートスキーが沢山ありますから、それらでくるくる回っている 人を見かけると思いますが、アクロのスピンも基本的にこれと同じです。 ただし、回転方向や足の位置等で細かく名前がついています。
表にしてみましたが、どれも言葉で説明してもよくわかりませんね。 とりあえず、ジャベリンからテールドラッグスピンのリンキングマニューバ (つなぎ技)のAVIファイル(208KB)を 載せときます。
名称 | 動作 |
---|---|
パラレルスピン | 両足を揃えてエッジの切り替えとポールを使ってスピンします。 |
ロイヤル | 片足スピンで、上げた足の爪先方向に回転します。 |
リバース | ロイヤルの逆回転です。 |
ジャベリン | 片足を立っている足の前からクロスさせて、持ち上げたまま、 爪先方向にスピンします。 |
リバースジャベリン | ジャベリンの逆回転です。 |
テールドラッグ | ロイヤルで上げた足を引きずるようにしてスピンします。 |
ティップトゥスピン | トゥをプレスして高速に回転します。 |
ティップテールスピン | 足を前後に開いてスキーでVの字を作り高速に回転します。 |
テールスピン | テールをプレスしてテールを中心に回転します。 |
名称 | 動作 |
---|---|
スライドクロス | ボーゲンから滑りながら板をクロスさせます |
シェアガイ | 逆ボーゲンからターンして、片足が180゜逆を向いた姿勢になります |
キックアップ | 足を振り上げながら半回転して、後ろからクロスさせ、 元の軸足を抜きます。 |
レッグブレイカー | 逆捻りのキックターンを繰り返し行います。 |
イリュージョン (ムービーAVIファイル477KB) |
半回転しながらキックターンをします。 |
ハワーズアラウンド | イリュージョンからキックアップにつないだような技です。 |
バドワースピン | これは言葉で説明するにはちょっと複雑なので 後程図を載せます。 |
ポールを使って体全体を持ち上げる技をリフトと呼びます。 これには色々なバリエーションがあるので、名前がついてないものも 沢山あります。
名称 | 動作 |
---|---|
リフト | 両足を大きく振り上げます |
クロストゥクロス | 振り上げた足を空中でクロスさせて着地します |
エアーフリップ | 足を振り上げ空中で水平に回転します |
バタフライ | 足を斜め上方向に振り上げ、頭部より高くあげて旋回させます |
スキーをてこのように使用した技をレバレージムーブと呼びます。 ティップロールは普通の板でやる人もいますね。
名称 | 動作 |
---|---|
ティップスタンド | スキーの先端で立ちます |
ティップロール | スキーの先端で立ち、そのまま後ろ向きにおります |
クロスティップロール | ティップロールを板をクロスさせたまま行います |
ハイキックティップロール | ティップロールで後ろにおりる時に片足を蹴り上げます |
ダフィースタンド | ダフィの形で立ちます |
残念ながら現在アクロの草大会は、東京フリースキークラブが主催している 「メモリアル」という大会だけです。これも不定期開催なので、 今年も開催されるかは定かでありません。
つまりアクロの場合、通常はいきなりSAJ公認大会となる場合が多いです。 公認大会というと敷居が高く感じるかもしれませんが、今は参加者が 非常に少ないので、地区大会ならまず無条件で参加できるのであまり 堅く考える必要はありません。
公認大会にでるためにはいくつか準備する物があります。
大会では、演技の内容をAPL(Acro Program Layout -
男子 86KB、女子 85KB)
という用紙に書いて前日に提出します。
ここに大体滑る軌跡を書いて、どの辺でジャンプやフリップをする
予定か印(フリップならF、ジャンプならJ)をつけます。
この時、フリップが全体の50%以下である事を確認しておきましょう。
また、APLでは行う技の申告もします。
例えば、フロントガッツフリップフルツイストなら、Fg1と書きます。
ジャッジはこれを見て技の判定をするわけです。
逆に言えば、ジャンプやフリップの位置しか書かないので、振り付け
等の細かい演技は毎回異なっても構わないわけです。
なお通常は予選と決勝では同じ演技をします。
演技に使う音楽をカセットテープに録音して提出します。 予備と合わせて前日のキャプテンズミーティングで2本提出します。 ステレオでもモノラルでも構いませんが、ゲレンデではあまりステレオ の意味はないでしょう。また現在は標準サイズのカセットテープだけで、 MDやマイクロカセット等他の媒体での提出は認められていません。 将来は、パソコンで編集した曲をフロッピーで提出したり、 電子メールで事前送付できるようになったらいいですね。
さて、競技会に出ようと思ったら、APLを書かなきゃなりません。 すると難度点のつく技が必要になってきます。そんなのできないって? いえいえ、ちゃんと練習方法がありますよ。 ジャンプはいきなり雪で試しても大丈夫でしょう。 ここでは、危険度の高いフリップの練習方法を見てみます。
ポールフリップは、板を付けて空中回転するので、失敗すると足を痛めたり、 エッジで怪我をしたり、はたまた、ポールが折れて刺さったりと、危険が 多いです。これらのリスクを回避するため、一般にはランドトレーニングという 方法をとります。これは芝生や砂場で、普通の靴でポールフリップの練習を する事です。これなら足も軽く、失敗しても足で着地しやすいですよね!?
オープンの練習 - オープンは、ほとんど逆立ちといっしょです。 逆立ちと違うのは、ポールにぶら下がって、垂直まで行ったら、壁の方に倒れます。 この時、ポールを手で押せば立ち上がれるというわけです。 最初は、ポールがまっすぐ止まってくれず、横に倒れてしまったりするので、 他の人にポールを押さえてもらって練習すると良いでしょう。
通常のSAJ公認大会は、大会当日と前日の合わせて二日間にわたって行われます。 前日は、受け付けしてゼッケンをもらい、大会バーンでの公式トレーニングに 割り当てられます。
また、前日の夕方には、キャプテンズ・ミーティングと呼ばれる競技会役員との 打ち合わせが行われます。 APLと音楽テープは、だいたいこの時に提出します。
大会当日は、試合前に再度公式トレーニングの時間がとられます。 この時間は、練習とゆうよりもその日のバーンコンディションを確認するといった 意味合いになります。
そして、お待ちかねの大会です。 通常は、女子予選、男子予選、女子決勝、男子決勝の順で行われます。 女子選手がお目当ての応援団は、はやめに行かないといけませんね。 現在のSAJ大会では、地区大会の決勝は男女とも予選上位6名、全日本選手権は8名 となります。
Text by Kazuma Aizawa - freestyle ski combined player |