そそり立つキッカーから空中に飛び出し天を舞うエアリアル。 そのあまりに過激な印象からやってみようと思う人は少ないかもしれません。 しかし、ちゃんと段階を追って練習すれば、一回転くらいはだれでも出来るよう になるのです。
あなたもトライしてみませんか?
「こんな事どうやって練習しているの?」と疑問に思いますよね? まずはプールに飛び込んで練習するのです。 と、いっても普通のプールの飛び込みではなく、ウォータージャンプ(WJ)という 人工芝でできたジャンプ台で、着地がプールになっている練習設備を使います。 これなら、たとえ頭から落ちても大怪我しないで済みます。 またスキーを付けたまま着水するので、ライフジャケットをして飛びます。
WJは現在以下の4個所があります。それぞれなんからの指導が受けられますから 初めての方でも大丈夫。さのさかとリステルは国内最大の施設で、 三回転用の台があります。 まずは、一度足を運んでみてください。
名称 | 所在地 | 問い合わせ |
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白馬さのさかウォータージャンプ台 | 長野県白馬村 | 0261-75-23-1239 |
リステルウォータージャンプ台 | 福島県猪苗代 | 0242-66-2233 |
テイネウォータージャンプ台 | 北海道手稲 | 011-684-3014 |
富山ウォータージャンプ台 | 富山県 | - |
これから本格的に競技に出ようと思っているなら、SAJ選手登録をしましょう。 上記WJでは、選手登録した人やSAJ登録クラブに所属していると割引になる施設が あります。
SAJ会員証 | SAT会員証 | SAJ競技者登録証 |
アップライトとは、縦の回転をしない技で、モーグルのエアと同じ技です。 まずは、飛び出すタイミングやジャンプ台に慣れるために、このアップライト から始めましょう。
エアリアルでもダフィやツイスター等見慣れた技を使います。 モーグルと違うのがフローターと呼ぶ巨大なエア台を使うところです。 これは、飛距離が8〜15mくらいある巨大なものです。 またWJでは、着水が水平なのも実際のジャンプと違う所です。 飛び方については、よい本が沢山出ていますから、そちらを参考にしてください。
フローターに慣れ、ダブルが余裕をもってできるようになれば、 次は待望の縦回転です。モーグルではよくバックフリップというような 呼び方をしますが、エアリアルでは、頭が下にくるジャンプを総称して サマーソルトと呼びます。
サマーソルトを初めてやるなら、後方一回転がもっともポピュラーでしょう。 その場合、シングルキッカーと呼ばれる台を使用します。 これは、フローターより飛び出し角度が大きくスノーボードのクォーターパイプ のような、いかにも回転しそうな台です。
まずは、飛び出さないゆっくりのスピードでキッカーに入りそのまま、後方に 滑って戻ってくる事を繰り返します。これをイメージと呼びますが、 これでまずはキッカーの形を感じ取りましょう。 この時、飛び出す事まで頭の中で想像してください。 体操のバク転を想像してはいけません。 滑走面に垂直にしっかり板に乗ったまま自然に空中に飛び出す事をイメージします。 キッカーは回転する目的で設計された台なので、 自分から回す必要はまったくないのです。
さて、いよいよレイアウト初挑戦です。 これにはまず恐怖に打ち勝つ事がもっとも大事でしょう。 そそり立ったキッカーは、ちょっとでも怖がって後傾になったら、 飛び出しで制御不能の回転力がついてしまい、 最悪キッカーに頭や手をぶつけてしまいます。 また、高速な回転がかかり、着水も確認できないでしょう。 これだけはなんとしても避けなければなりません。 とにかくイメージをした通り、滑走面にたいして体を垂直にしたまま、 飛び出す事に全神経を集中しましょう。 また、飛び出す時に手は上に差し上げられている事が望ましいですが、 腕を差し上げる動作で後傾になるようなら、今は上げなくても構いません。
後はあなたの決断だけです。 これが空での自由を手に入れる第一歩なのです。
WJになれたら、WJの大会に出てみましょう。 雪での大会は草大会がありませんが、WJならあります。 例えば、'97夏にはさのさかWJでは毎月末に特に参加制限のないコンテストを 実施していました。
WJを含めたエアリアル公認競技の場合は、大会に出るためには、 まずテクニカル認定というものを受けなければなりません。 これは、行う技が安全かどうか判定して認めてもらう物です。 SAJの大会では、このテクニカル認定を受けた技しか飛ぶ事ができないのです。
エアリアルのサマーソルト系の技には以下のような種類があります。 アップライトはモーグルと同じなので省略します。
テクニカル認定証 |
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二回転以上はこれを組み合わせて呼びます。 例えば、「バック・フル・フル」と言った場合は、後方一回転目に一回捻り、 二回転目にさらに一回捻る二回転二回捻りの技になります。 SAJ技記号で書くとB44、FIS技記号で書くとbFFになります。 リザルトにはこの記号が記載されます。 同じ二回転二回捻りでも、「ハーフ・ルーディ」と言った場合は、 一回転目は半捻りで二回転に一回半捻りするものです。 SAJ技記号で書くとB35、FIS技記号で書くとbHRuになります。 同様に、前方回転でそれぞれを行えば、F44/fFF、F35/fHRuになります。
ちなみにルーディとランディは人の名前です。 初めに一回半捻った人がルドルフさん、二回半捻った人がランドルフさん という人だったのでした。 でもダブルやトリプルに名前がないのは不思議ですね。 知ってる人がいたら教えてください。
日本では雪で飛ぶ方法は数える程しかありません。 通常は、東京都スキー連盟や長野県スキー連盟が実施するエアリアル講習会に 参加することです。 '98シーズンにさのさかやザイラーで初めての試みとして常設シングルキッカーを 設置します。雪不足のため遅れましたが、さのさかは1/16にオープンしました。
これらを除くと、あとはいきなりエアリアル競技会に参加し、 その公式トレーニングで飛ぶしかありません。
競技会で飛ぶためには、テクニカル認定を受けなくてはいけません。 これはWJで受けても、雪で安全であるとは限らないので、雪でも受ける必要が あります。 また、アップライトのクォード以上、ヘリコプター二回転以上、 サマーソルトの二回転以上は、WJでテクニカルを受けた技しか 雪上テクニカルを取る事ができません。 例えば、冬に二回転飛びたいと思ったら、 WJで二回転以上を取得して置く必要があるのです。 逆に一回転やトリプルまでなら、WJのテクニカルは必要ありません。 雪上で直接テクニカルを取得してください。
WJテクニカル |
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↓ |
雪上テクニカル |
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競技会 |
公認大会では、大会に出る前にもう一つ確認する事があります。 エアリアルは、二回ジャンプをして、その合計得点で順位を争います。 この二回のジャンプは異なるジャンプをしないといけないのです。 つまり、テクニカルでは二種類のジャンプの認定を受けておかないと だめなわけです。 異なるジャンプの定義は以下いずれかを満たす必要があります。
なお、国内大会では、予選/決勝という区分はありません。 単純に二本の合計で争われます。
通常公認大会の流れは以下の様になります。
まず、練習は大会の2日前からできる事が多いです。 そして、だいたい大会前日にテクニカル認定会が併設されます。 ここでテクニカルを取得できれば、次の日大会で飛べるわけです。 テクニカルの最中も練習はできるので事前にテクニカルを取っていれば それにこした事はありません。
大会当日は、女子一本目、女子二本目、男子一本目、男子二本目という順序で 行われます。
さあ、後は思いっきり飛ぶだけです。
国内大会に出て成果が出たら、次の目標のひとつは国際大会でしょう。 その場合、ノーアムやヨーロピアンカップ等の、コンチネンタルカップ に出場する事になりますが、これはただ出たいだけでは出れません。
まず、FISの国際ライセンスを取得しなければいけません。 これには、国内出場大会の平均難度(二本の合計)が女子4.6以上でランキング6位以内、 男子6.2以上でランキング12位以内でないといけません。 これは男子の場合、最低でもフルフルとレイタックタックを常にこなす必要がある ということです。また、所属都道府県連の推薦も必要です。
ここから先は、僕も経験した事のない世界です。 みなさんが、切り開いて進んでくざいね!
Text by Kazuma Aizawa - freestyle ski combined player |